韓国、前政権時代に警察に捜査介入を行っていたことがバレる【ゆっくり解説】

2022年6月25日 2022年6月25日

10万グラムの人

#韓国　#ニュース　#ゆっくり解説
北朝鮮軍に銃殺された国民の
捜査結果を改ざんした疑惑
　文在寅（ムン・ジェイン）政権は、北朝鮮との関係になると、ウソと欺瞞（ぎまん）を繰り返し、北朝鮮の残虐性を隠蔽（いんぺい）してきた。それは北朝鮮を丁重に遇し、関係の改善を切望したためである。

　そもそも文在寅氏は、北朝鮮に非核化の意思があると主張し、世界を欺いてきた。その結果、一時は南北首脳会談に加え、米朝首脳会談が開かれて緊張緩和が進んだかのようであったが、これも長くは続かなかった。

　文在寅政権は、北朝鮮の金正恩総書記の妹・与正（ヨジョン）氏の脅迫に応じ、北朝鮮から脱北してきた人々が風船に載せてビラを散布し、北朝鮮住民に金正恩政権の実態を知らせようとする活動を禁止し、取り締まりを始めた。また、韓国政府は脱北者の人権活動に補助金を出していたが、文在寅政権はその9割をカットした。

　国連で北朝鮮の人権決議案に対し、5年の政権存続中、一度も共同提案国になることなく目をつぶってきた。北朝鮮の住民も韓国人と同族であり、その人権について重大な関心を持って当然である。しかし、文在寅氏にとっては、北朝鮮の住民より、彼らを弾圧する金正恩氏の方が重要なのであろう。

　文在寅政権の北朝鮮に関するウソと欺瞞、隠蔽体質を示す、最も典型的でわかりやすい事例が、仁川（インチョン）沖で海洋水産部職員・李デジュンさんが北朝鮮軍に射殺され、遺体を焼却された事件に関するものである。

　文在寅政権は李さんが北朝鮮の海域に入ったため射殺されたとして、事件をうやむやにして幕引きを図った。

各国政府にとって自国民の保護は何にもまして重視しなければならない責務である。しかし、文在寅氏は自国民が北朝鮮軍によって銃撃され殺害されるのを防ぐ努力を行わなかった。それどころか、李さんが賭博による借金苦が原因で「精神的パニック状態」となり、越北しようとしたとして、捜査結果を改ざんし、同氏に責任転嫁した。

　しかし、尹錫悦（ユン・ソクヨル）政権になって、この事件を捜査した海洋警察、国防部から捜査結果の内容は事実無根だとの発表が行われた。しかも、当初の発表の背景に青瓦台の意向と圧力があったことをうかがわせる事態となっている。その責任は重大であり、大統領としての国民を保護すべき職務を放棄したと言わざるを得ない。

文在寅政権時の捜査結果を
政権交代後に全面的に訂正
　仁川海洋警察は、6月16日に会見を開き、2020年9月に仁川沖の小延坪（ソヨンピョン）島近くの海上で失踪した後、北朝鮮軍に銃撃され、殺害された海洋水産部所属の公務員である李さんについて「越北の意図があったと認めるほどの証拠は見つからず、自分の意思で北朝鮮に向かったと断定する根拠はない」との捜査結果を公表した。

　また、国防部も「殺害された公務員が越北を試みたと推定されると発表したことで国民に混乱を与えた。保安関係上すべてを公開できない点に対しても遺憾に思う」と表明した。

　政権が交代した後、このように捜査結果を全面的に訂正するような事態はあってはならない。それは当初に意図的な改ざんが行われたことを物語っている。

　文在寅氏の青瓦台と共に民主党は「李氏が自発的に越北を試みた状況がある」と説明していたが、尹錫悦政権になって韓国政府は「自主的に越北を試みたとはみることができない」と結論付けたということである。

　李さんは小延坪島南側2.2キロメートル海上に浮いていた海洋水産部所属船から行方がわからなくなり、北朝鮮海域で漂流していたところ、北朝鮮軍の銃撃を受け死亡した。北朝鮮側は新型コロナの感染拡大を理由に李さんの遺体を焼却し、銃撃した事実を隠蔽しようとした。

射殺からわずか7日で
中間捜査結果を公表
　李さんが射殺された2日後の20年9月24日、仁川海洋警察署長は、「国防部の関連情報などを総合してみると、（李さんが）自ら北に向かった可能性は排除できない」としつつも「詳しい調査を進めていく予定」と述べていた。

　しかし、そのわずか3日後、海洋警察庁は「（李さんが）北側に亡命の意思を表明した状況などを確認した」と語った。そして、海洋警察庁は射殺からわずか7日間で中間捜査結果を公表して「自ら北に向かったものと判断される」という断定的な結論を出していた。

さらに10月22日の発表でも、李さんの個人情報である債務の金額、具体的な賭博の回数や時期などを詳しく公開した。そして「李さんはパニック状態で、現実逃避の目的で北に渡ったものと判断される」と説明した。

　このような短期間で捜査結果が出たことに関し、海洋警察内部から「『自主越北』に力点を置けという青瓦台民情首席室の指針が、不十分で性急な中間捜査結果の発表につながった」という証言が出ている。

　元海洋警察庁長はこの内部証言を否定しているが、捜査結果を発表するまでの性急さや後述する内容の不正確さから、内部証言を否定するのは難しく、文在寅政権に配慮したことが疑われても仕方ないだろう。

海洋警察が公表した
捜査結果に数々の疑問
　海洋警察は、先述の2次発表の際「李さんの借金は総額3億3000万ウォン（約3450万円）ほどで、そのうち賭博で抱えた借金が2億6800万ウォン（約2800万円）」と明らかにした。

　しかし韓国人権委は2021年7月、海洋警察の発表内容について「李さんの賭博の借金を2倍以上水増しして発表するなど、事実に基づいた客観的発表とは見なし得ない」とし、また、「当時海洋警察が諮問した専門家7人のうち、『精神的パニック状態』という表現を使ったのは1人だけ」と批判した。

　さらに李さんの遺族が海洋警察から受け取り公開した、海洋水産部所属船の職員7人の陳述によれば、「北に行くためには防水服を着て海水に入らなければならないが、李さんの部屋には防水服が残っていた。失踪当時は海水が東に流れていたが、その中で北側に行くのは無理」とされている。

　また、遺族側の弁護士は、「海洋警察の初動捜査資料に越北という言葉は見られなかった」としている。

　こうした事実に照らせば、海洋警察が事件直後発表した「越北」という結論は、外的な圧力なしでは無理があるように思われる。

　また、北朝鮮は新型コロナの流入阻止のため、殺害した李さんの遺体を焼却したという。海洋警察の捜査結果では、北朝鮮が遺体を焼却したという事実を「焼却したと推定されることから共同調査が必要」などと焼却の事実認定を躊躇したが、これは青瓦台の方針のためだったとされている。

李さんが射殺された時
文在寅氏は何をしていたのか
　文在寅氏は、2014年に旅客船「セウォル号」が沈没する惨事が起きた際、朴槿恵（パク・クネ）元大統領には「空白の7時間」があり、それは乗客・乗組員の救助の遅れにつながったとして、「緊迫した事故の瞬間に大統領が何をしていたか明らかにすべきだ」と主張していた。

　では今回の事件での文在寅氏の対応はどうだったか。
青瓦台は、李さんの失踪について「西海で漂流中に北朝鮮の警備艇に発見された」との報告を受けたが、その後も何の対応もしていなかった。それから3時間後に李さんは射殺された。

　当時文在寅氏は就寝中であり、大統領への報告が遅れたのかもしれない。しかし、文在寅氏は就寝中であったとしても、李さんがその海域で失踪したことは知っていたはずであり、人命救助を重視していたならば、北朝鮮の警備艇が発見するなどの重大事発生の際には報告させていなければならなかったはずである。自国民保護に関する意識が希薄だったと言わざるを得ない。

　この事件に対する大統領の関与に関する資料は、文在寅氏の大統領退任後、大統領記録室に移管され、15年間は閲覧できない。したがって真相究明につながる捜査ができるかは共に民主党の協力次第である。

李さんの遺族側は
文在寅氏を告発の意向
　遺族側は文在寅氏と徐薫（ソ・フン）前国家安保室長を告発する考えを明らかにしている。文在寅氏については職務放棄または公務執行妨害を、徐薫氏については公務執行妨害を適用する見通しである。それに殺人ほう助も加わるかもしれないという。

　ただ、大統領記録室にある文在寅氏の関与に関する資料は、国会の3分の2以上の賛成もしくは管轄の高等裁判所の令状がないと閲覧できない。遺族は青瓦台の国家安保室、海洋警察庁、国防部を相手に起こした情報公開請求訴訟1審で一部勝訴し、尹錫悦政権は海洋警察による控訴を取り下げた。しかしこれだけでは大統領記録室の資料を公開することはできない。

　また、民主党が国会で絶対過半数の議席を確保しているので、本件での国会の協力には悲観的にならざるを得ない。大統領記録物の閲覧を求める声に対し、共に民主党の禹相虎（ウ・サンホ）非常対策委員長は「国民生活が非常に深刻だ。今はそんなことをやるべき時か。これがなぜ懸案なのか」と開き直り、「協力する考えはない」と述べた。

　都合の悪い資料は隠蔽する文在寅政権時代の悪習が存続しているのだろう。国民の生活が困難であることと、国民の生命に関わる重大事を検証するための資料の公開には関係がないはずである。

　尹錫悦政権の国家安保室は韓国軍当局や海洋水産部などが国家安保室に報告した内容や、海洋水産部が作成した初動捜査資料、李さんが乗り組んでいた漁船の船員の供述などは公開する方向で努力しているという。しかし、大統領記録室にある資料を閲覧できなければ裁判の遂行にも制約が出てくるであろう。

［プレイリスト］
【韓国のお話】